【心臓MRIの特徴】
心臓MRI検査は被曝する事なく検査できるのはもちろんのこと、造影剤を使用せず評価できる項目がある等、体に負担の少ない検査といえます。心機能や形態、冠動脈、心筋組織性状など、心臓を総合的に評価できる大変有用な検査です。
【MRI検査について】
患者さんは強い磁石とラジオに使われているような電波を用いて体内の状態を画像にする検査です。筒のような形の大きな機器の中に入り検査を受けます。用いる電磁波の周波数(数十メガヘルツ)はラジオで使われている周波数の帯域の中にあります。
強力な磁力を使いますので、体内金属がある場合は画像が乱れたり、金属の材質によっては危険が生じたりすることがあります。担当医師にご相談ください。
また当クリニックでは心臓ペースメーカーが埋め込まれている患者さんにはMRI検査はできません。(*検査可能の施設もあります。)
【心臓MRIでどんなことがわかるか?】
心臓の形態や動きをみるためには、Cine (シネ) MRIという方法を用います。この方法では多くの場合、患者さんに10~15秒間息を止めてもらい、その間に心電図と連動させて一秒当たり20~30コマの画像をつくり、モニター画面で動画として心臓の動きを観察します。この方法で心機能(心室の容積や収縮率など)や心筋の厚さの異常を調べることができます。
MRIには心筋の性質をみるための撮像法もあります。例えば、心筋梗塞や炎症による心筋浮腫、さらに心筋の中に脂肪が沈着しているかどうかも確かめることができます。
冠動脈の奇形・狭窄や、心膜(心臓を取り囲んで心臓の働きを円滑にするための膜)の病気について有用な情報が得られる場合もあります。冠動脈の評価については、冠動脈CTで評価困難となるような高度石灰化の症例でも、血管内腔を描出できる場合があります。
狭心症の評価として、心筋の血流の状態が確認できます。少量の造影剤をボーラス投与し、心筋の造影効果から心筋血流分布を評価することができます。
遅延造影検査では心筋細胞の障害があるかどうかについても情報が得られます。心筋梗塞の分布や心内膜下梗塞の診断も可能です。非虚血性心疾患においては、様々な心筋症における心筋の変性(線維化)を評価することができ、原因不明の心不全症例の精査に有用です。
上記1,2,3の検査は造影剤を使用せずに評価ができます。
上記4,5の検査は造影剤(ガドリニウム)を点滴注射し検査します
【MRI造影剤の副作用の頻度は?】
造影剤に注意が必要な方
以下の条件に該当する方は、造影剤使用に当たって十分な注意が必要です。
a. 気管支喘息の既往(特に現在、症状があり治療中)のある方
b. ヨード造影剤や MRI 造影剤に過敏症、アレルギーの既往のある方
c. 他の薬剤や食料品などに過敏症、アレルギーの既往のある方
アレルギーによる副作用の内容と頻度
MRI 造影剤による副作用、アレルギー様反応は、発疹やかゆみなど軽度の症状を含めた副作用全体で約 1.4%程度に、呼吸困難や血圧低下、アナフィラキシーと呼ばれる重い副作用は約 2 万人に1人程度の割合で発生し、ごくまれには死亡例も報告されています。
*腎機能障害のある人にMRI造影剤を用いることで、腎性全身性線維症(NSF:nephrogenic Systemic Fibrosis)という非常に重篤なものも報告されています。
透析患者さんを含め、腎機能の悪い人(特にeGFRが30未満の場合)にはこのガドリニウム製剤は使用禁忌とされています。
授乳中の人が造影MRIを受けた場合の影響は?
授乳婦が造影MRI(ガドリニウム)を受けた場合、24時間後までの乳汁中への移行量は、静脈から注射した造影剤量の0.04%以下と報告されています。(Radiology 216(2):555-558(2000))
さらにそれを飲んだ乳児が消化管から吸収される量はごくごくわずかであり、静脈から注射した造影剤量の0.0004%未満と報告されています。(Radiology 216(2):555-558(2000))
このような点を踏まえ、日本放射線学会は「造影剤使用後の授乳による児への影響は非常に小さい。特段の理由のない限り、造影剤使用後の授乳制限は必要ない」と判断しています。
ただし、「造影剤使用後の授乳で子供に悪影響が出るのではないか」と母親が懸念している場合には、検査後24時間・48時間の授乳制限を行うことは差し支えないものの、その際には「制限中の栄養摂取の準備(人工乳の使用や、検査前の搾乳など)について予め相談しておくことが望ましい」と提案しています。
【終わりに】
MRI検査は、ヨード系造影剤を使う造影CT検査と比べても副作用の発生率は格段に低く安全な検査といえます。
当クリニックで検査を行う場合には、検査の内容、有用性、合併症や副作用、代替検査の有無などを十分に説明をすることになっていますので、安心して検査に臨むことが出来ます。
それでも心配な方は、当日の診察で詳しく説明してもらうようにして下さい。
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